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【AZD0120】70歳以上の未治療多発性骨髄腫に対するBCMA/CD19二重標的CAR-T細胞療法

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Liu, Jin et al. “BCMA/CD19 dual-targeting CAR T cell therapy in older patients with newly diagnosed multiple myeloma: a phase I study.” Blood advances, bloodadvances.2025019036. 2 Apr. 2026, doi:10.1182/bloodadvances.2025019036

多発性骨髄腫(MM)は、診断時の年齢中央値が69歳とされる高齢者に多い疾患です。特に70歳以上の患者においては、身体的な虚弱さ(フレイル)や合併症のリスクから、造血幹細胞移植を伴う強度の強い治療が適応外となることが少なくありません。そのため、低侵襲かつ高い効果を両立する新たな選択肢の確立が、この層の予後を改善する上で極めて重要な課題となっていました。

キーポイント

  • 革新的な製造技術: AZD0120(旧称:GC012F)は、FasTCAR®プラットフォームにより「翌日製造」を実現した、BCMAおよびCD19を標的とする二重標的型CAR-T細胞製品です。
  • 対象患者の選定: これまで細胞療法の研究が限定的であった、70歳以上の未治療多発性骨髄腫(NDMM)患者を対象としています。
  • 治療成績: 評価可能な全症例において、厳格な完全奏効(sCR)および投与1ヶ月時点での微小残存病変(MRD)陰性化をいずれも100%の割合で達成しました。

臨床試験の概要(AZD0120 Phase I Study)

本試験は、高齢のNDMM患者におけるAZD0120の安全性と有効性を評価することを目的とした、単群、単施設、オープンラベル試験です。

導入療法の構成

  • CAR-T細胞投与に先立ち、標準的な初期治療として「2サイクルのVRD療法(ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾン)」が実施されました。これにより、腫瘍負荷を軽減した状態での細胞投与が図られています。

試験フェーズ

  • 第I相(Phase I)

主要評価項目(Primary endpoint)

  • 安全性および有効性の評価

主要な二次評価項目

  • 薬物動態(qPCR法を用いた末梢血中のCARコピー数の測定など)

結果の要約

  • 有効性: 評価可能な全患者(n=8)において、sCR(厳格な完全奏効)率100%を達成。
  • MRD陰性率: 投与1ヶ月時点で100%(Euroflow感度10⁻⁶)。6ヶ月時点(n=7)および12ヶ月時点(n=2)でも100%を継続。
  • 有害事象: Grade 3以上の血液毒性として、好中球減少症(75%)、白血球減少症(50%)などが報告されましたが、投与後30日以内に多くがGrade 2以下へ速やかに回復しています。

高齢患者へのフロントライン治療としての適応

臨床現場では、年齢や身体機能の低下のみを理由に高度な治療が断念される傾向にありましたが、本試験にはフレイル(虚弱)と判定された患者が半数含まれていながら、非常に高い治療完遂率を示しました。

これは、適切な管理体制があれば、高齢かつ虚弱な患者であっても、初期段階から強力な免疫療法ができる可能性を示唆しています。これは今後、年齢による治療の制限を取り払う可能性を含んでいます。

BCMA/CD19二重標的とFasTCAR®プラットフォーム

AZD0120は、骨髄腫細胞に発現するBCMAとCD19の両方を標的とすることで、治療抵抗性を回避し、より確実な抗腫瘍効果を狙うデザインとなっています。さらに、独自のFasTCAR®プラットフォームを採用することで、製造工程の劇的な短縮、「翌日製造」に成功しました。

GC012F(現在のAZD0120)は、翌日製造(next-day manufacturing)を可能にする革新的なFasTCAR®プラットフォームを用いて製造された、自己由来のBCMAおよびCD19二重標的CAR-T細胞製品です。

高齢者では病勢の進行が早い場合があり、治療待機期間中に状態が悪化するリスクが高いことが課題でしたが、製造の迅速化により、待機期間中の病勢増悪リスクを最小限に抑え、速やかな治療導入が可能となります。

安全性プロファイル

高齢者の治療管理において最も重視されるのは安全性です。本試験では、CAR-T療法で懸念されるサイトカイン放出症候群(CRS)の発症率は50%(8例中4例)でしたが、その全例がGrade 1でしあ。4例中3例は特別な治療を要さず改善し、残り1例もトシリズマブの1回投与のみで速やかに軽快しています。また、神経毒性(ICANS)は一例も観察されませんでした。

さらに、血液毒性についても良好な経過が示されています。好中球減少症などの有害事象は見られましたが、投与後30日以内にはその多くがGrade 2以下に回復しており、この回復の速さは体力の乏しい高齢患者にとって大きな安心材料となります。

100%のMRD陰性化とQOLの改善

本試験では被験者数は少ないものの、全ての評価対象患者がMRD陰性という、非常に深い寛解に到達しました。さらに、投与前に「日常生活に制限がある(ECOG 2)」と判定されていた虚弱な患者2名が、投与後には「軽作業が可能な状態(ECOG 1)」へと回復しました。これは、強力な治療が必ずしも高齢者の体力を奪うわけではなく、むしろ原因となる病因を治療することで、生活の質の改善をもたらす可能性を示しています。単なる延命ではなく、日常生活動作(ADL)の向上が伴う治療であることは、高齢者医療において非常に重要といえます。

さいごに

本研究は、70歳以上の未治療多発性骨髄腫患者に対し、BCMA/CD19二重標的CAR-T細胞療法が高い有効性と管理可能な安全性を提供できうることを示しました。高齢やフレイルを理由に治療強度を下げるのではなく、製造期間の短い高度な細胞療法を初期治療として導入することで、より深い寛解と身体機能の回復を同時に実現できる可能性が示されました。