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【RedirecTT-1試験】骨髄外病変を有する高リスク多発性骨髄腫におけるブレークスルー:タルケタマブとテクリスタマブの併用療法

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Kumar, Shaji et al. “Dual Targeting of Extramedullary Myeloma with Talquetamab and Teclistamab.” The New England journal of medicine vol. 394,1 (2026): 51-61. doi:10.1056/NEJMoa2514752

多発性骨髄腫の治療が進化する中でも、骨髄外に病巣を広げる真の骨髄外病変は、特に悪性度が高く、治療抵抗性を示し、歴史的に予後が極めて不良とされてきました。この群に対して、2つの異なる二重特異性抗体、タルケタマブ(Talquetamab)とテクリスタマブ(Teclistamab)を用いて検証した臨床試験がRedirecTT-1試験です。

キーポイント

  • 真の骨髄外病変を有する予後が極めて不良な患者集団において、この併用療法は79%という非常に高い奏効率を達成しました。
  • 奏効率が高いだけでなく、深く、かつ持続的であり、過去のデータと比較して生存期間を大幅に延長しました。
  • 重大な副作用として感染症がみられましたが、管理可能であり、各薬剤の単独投与で知られているプロファイルと一致すると考えられました。

RedirecTT-1試験の概要

  • 試験フェーズ: 第2相
  • 対象患者: 少なくとも3クラスの前治療歴がある、薬剤抵抗性の真の骨髄外病変を伴う多発性骨髄腫患者90名
  • 介入: タルケタマブ(抗GPRC5D)とテクリスタマブ(抗BCMA)の併用
  • 主要評価項目: 機能的画像診断による全奏効率
  • 主要な副次評価項目: 奏効期間、無増悪生存期間、全生存期間、および安全性

高リスク多発性骨髄腫における高い奏効率

本試験の主な目的は、ほとんどの治療法が奏効しない難治性の患者群において、この併用療法が奏効を誘導できるかどうかを明らかにすることでした。結果は、全奏効率79%(95%信頼区間[CI], 69~87)に達しました。論文が「仮説として設定された40%を大幅に上回った」と述べているように、非常に優れた結果でした。

先行研究では、同様の患者集団に対する標準治療の奏効率はわずか約24%でした。さらに、この治療法は、他の免疫療法をすでに受けた治療抵抗性の高い患者に対しても良好な結果を示しました。特に、抗BCMA CAR-T療法を受けた経験のある患者において、83%が「最良部分奏効(VGPR)以上」という臨床的に意義のある奏効を達成しました。

奏効率が高いだけでなく、深く、持続的である

奏効の深さについて、患者の70%が「最良部分奏効(VGPR)以上」を達成し、さらに54%が「完全奏効(CR)以上」を達成しました。先行研究で示された標準治療における完全奏効率がわずか3%であったことを考えると、これは非常に優れた結果です。

次に、治療効果の持続性についても評価されました。主要な生存指標は以下の通りです。

  • 無増悪生存期間(Progression-Free Survival, PFS)15.4ヶ月(95% CI, 10.8~推定不能)でした。
  • 12ヶ月時点で、患者の61%が無増悪状態を維持し、74%が生存していました。

この無増悪生存期間は、先行研究において、承認済みの標準治療を受けた場合の無増悪生存期間の中央値は3ヶ月未満、承認済みの二重特異性抗体単剤療法で6ヶ月未満という状況を考えると極めて良好な結果といえます。

安全性プロファイル

最も一般的に見られた有害事象(全グレード)は、口腔関連症状(87%)、サイトカイン放出症候群(CRS)(78%)、および発疹以外の皮膚症状(69%)でした。CRSはすべてグレード1または2の軽度から中等度のものでした。

より重篤な有害事象については、患者の76%がグレード3または4の有害事象を経験し、その大半は血液学的なものでした。また、患者の79%が何らかのグレードの感染症を発症し、そのうち31%はグレード3または4の重篤な感染症でした。追跡期間中に発生した10件の死亡例のうち、5件は感染症が原因でした。治験責任医師は、これらの死亡例のうち5件を治験薬関連、残りの5件を治験薬とは無関係と判断しました。

しかし、これらの重篤な有害事象が高い割合で発生したにもかかわらず、その内容は各薬剤を単独で使用した場合に知られているプロファイルと概ね一致していました。また、致死的でない有害事象が原因で治療を中止した患者はわずか6%であったことは、リスク・ベネフィットのバランスを考える上で極めて重要な情報といえます。さらに、本試験では患者の87%が免疫グロブリン静注療法(IVIG)を受けており、こうした感染症リスクに対する積極的な予防・管理が、本治療レジメンの管理可能性を支える重要な要素であることが示唆されます。

さいごに

RedirecTT-1試験は、タルケタマブとテクリスタマブの2種類の二重特異性抗体の併用療法が、高リスクの骨髄外病変を伴う多発性骨髄腫患者において、高率で深く、かつ持続的な奏効をもたらすことを示しました。この結果は、患者ごとに製造が必要なCAR-T細胞療法とは異なり、すぐに使用可能な「既製(off-the-shelf)」の二重特異性抗体の組み合わせが、このような難治性の患者群に対して、非常に有望な治療選択肢となり得ること示唆しています。現在、この併用療法をさらに評価するための第3相臨床試験(MonumenTAL-6)も進行中です。