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【COALITION試験】 悪性度の高いリンパ腫治療に対するグロフィタマブ(glofitamab)と化学療法の併用

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Minson, Adrian et al. “Glofitamab Combined With Pola-R-CHP or R-CHOP as First Therapy in Younger Patients With High-Risk Large B-Cell Lymphoma: Results From the COALITION Study.” Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology vol. 43,23 (2025): 2595-2605. doi:10.1200/JCO-25-00481

高リスクのびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の治療は、長年にわたり大きな課題に直面してきました。特に若年の患者であっても、標準的なR-CHOP化学療法による治癒率は50%に満たないという現実があります。この状況を打開すべく、新しい作用機序を持つ二重特異性抗体「グロフィタマブ:glofitamab」を化学療法に併用する第II相臨床試験「COALITION」が実施されました。

主要なポイント

  • 非常に高い奏効率:治療の過程で、最終的に患者の98%が、「完全奏効」という最良の奏効を達成しました。
  • 有望な生存期間:治療後2年時点での無増悪生存率は86%に達し、過去のデータと比較して非常に良好な結果を示しました。
  • 高い安全性と忍容性:懸念された副作用は軽度で管理可能であり、患者の96%が計画通りに治療を完遂できました。
  • 革新的な試験デザイン:迅速な治療開始(診断から中央値14日)を実現し、従来の試験では除外されがちな、より現実世界の患者に近い集団を対象としました。

COALITION試験の概要

  • 試験フェーズ:第II相臨床試験
  • 治療:Glofitamab combined with R-CHOP or Pola-R-CHP
  • 主要評価項目:治療の安全性と遂行可能性(有害事象の数と重症度、治療中止率、相対的用量強度など)
  • 副次評価項目:奏効率(全奏効率、完全奏効率)、生存期間(無増悪生存率、全生存率)
  • 結果の要約:グロフィタマブと化学療法の併用は安全に遂行可能であり、管理可能なCRS(発生率21%、全てグレード2以下)を示した。完全奏効率は導入療法終了時点で74%、最良奏効率として98%に達し、2年無増悪生存率86%、2年全生存率92%という非常に高い有効性が確認された。

1. 驚異的な奏効率

COALITION試験の併用療法は、6サイクルの化学療法併用期間と、その後の2サイクルにわたるグロフィタマブ単剤での地固め療法で構成されます。

試験に参加した80人の患者において、全奏効率(ORR)は100%という結果でした。主要な化学療法併用期間を終えた導入療法終了時点(EOI; End of Induction)では、PETスキャンでがんが完全に消失したことを示す完全代謝奏効(CMR; Complete Metabolic Response)の患者は74%、部分的に縮小した部分代謝奏効(PMR; Partial Metabolic Response)の患者は23%でした。

さらに、このEOI時点でPMRだった18人の患者全員が、その後のグロフィタマブ単剤による地固め療法を経て、最終的にCMRへと転換しました。これにより、最良奏効としてのCMR率は98%に達しました。この結果は、グロフィタマブが化学療法後に残存する微小ながん細胞を根絶する上で重要な役割を果たす可能性を強く示唆しています。

2. 生存期間の延長へ:有望なデータが示す持続的効果

追跡期間の中央値が20.7ヶ月時点での主な生存データは以下の通りです。

  • 2年無増悪生存率(PFS)86%
  • 2年全生存率(OS)92%

この数値は、これまでの標準治療と比較して非常に優れています。例えば、先行する臨床試験であるPOLARIX試験では、同様の高リスク患者群における2年PFSは75%でした。異なる試験の結果を直接比較することには限界がありますが、COALITION試験の86%という結果は、それを大きく上回る可能性があります。

さらに、この治療法の有効性は、特に予後不良とされるサブグループにおいて顕著でした。治療が極めて困難である「ダブルヒットリンパ腫(HGBL-DH)」の患者群において、2年無増悪生存率は100%という驚異的な結果が報告されています。

3. 高い安全性:強力な効果と管理可能な副作用の両立

グロフィタマブのような二重特異性抗体で懸念される「サイトカイン放出症候群(CRS)」は、免疫が過剰に反応する副作用ですが、この試験では非常にうまくコントロールされていました。

  • サイトカイン放出症候群(CRS):発生率は21%でしたが、その全てがグレード1または2の軽度から中等度であり、重篤なケースは一件も報告されませんでした。これにより、治療は外来での実施が可能となりました。
  • 治療の完遂率:96%という非常に高い割合の患者が、計画された全ての治療コースを完了できました。これは、治療の忍容性が高く、多くの患者が副作用に耐えながら治療を続けられたことを裏付けています。
  • 主な有害事象:好中球減少症や末梢神経障害が最も一般的に見られましたが、グレード3以上の有害事象(Grade ≥3 AEs)の発生率は両群で同等(58%)であり、グロフィタマブの追加によって新たな安全性の懸念が生じることはありませんでした。注目すべき点として、発熱性好中球減少症は、Glofit-Pola-R-CHPを投与されたB群でのみ報告され(15%)、治療法による安全性プロファイルの違いが示唆されました。

この結果は、グロフィタマブと化学療法の併用が、強力な効果を発揮しながらも、外来で安全に管理できる実用的な治療法であることを示しています。

4. 革新的な試験デザイン:最も治療を必要とする患者への迅速なアクセス

この試験は、特に以下の2点で従来のデザインと一線を画します。

  • 迅速な治療開始:通常、臨床試験は登録から治療開始までに数週間を要しますが、この試験では最初のR-CHOP化学療法のサイクルを受けた後に登録することを許可しました。その結果、診断から治療開始までの期間の中央値がわずか14日に短縮されました。
  • 除外バイアスの低減:病状の進行が非常に速い患者や、腫瘍量が極めて多い患者は、スクリーニング期間中に状態が悪化し、従来の臨床試験からは除外されがちでした。この試験デザインは、そうした「最も治療を必要とする」患者も参加することを可能にしました。

このデザインにより、腫瘍量が極めて多い(TMTV中央値842 cm³)患者など、通常は予後不良のため臨床試験から除外されがちな集団が含まれました。このような高リスク集団において2年無増悪生存率86%という卓越した結果が得られたことは、この治療法の有効性の高さを示唆します。このアプローチは、従来の試験に内在する「ポジティブセレクションバイアス」を最小化し、得られた結果がより現実世界の臨床実態を反映している可能性を高めています。

まとめ

COALITION試験は、高リスクの若年性LBCL患者に対する初回治療として、二重特異性抗体グロフィタマブを化学療法に併用することで、驚異的な奏効率と有望な生存期間を、管理可能な安全性プロファイルと共に達成できることを示しました。特に、現実世界の診療に近い患者集団を対象とした革新的な試験デザインは、この結果の臨床応用への期待が持てます。

現在、この有望な結果をより大規模な集団で検証するため、第III相ランダム化比較試験である「SKYGLO試験」が進行中です。この試験の結果が、COALITION試験の発見を確固たるものにすることが期待されます。