引用:
論文のキーポイント:
- 反応率: CD19-CAR-T療法を受けた患者の63.8%が治療に反応し、46%が完全寛解(CR)を達成した。
- 生存率: 全生存期間中央値(OS)は8.5ヶ月であり、2年後のOSは38%に達した。
- 副作用: グレード3以上の免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は37%、サイトカイン放出症候群(CRS)は16%で発生した。
背景と目的:
Richter症候群は、慢性リンパ性白血病(CLL)患者に発生する非常にアグレッシブなB細胞リンパ腫で、従来の治療法では効果が限定的である。本研究は、レトロスペクティブ試験によってRichter症候群に対するCD19標的キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法の有効性と安全性を評価することを目的としている。
試験概要:
- 試験デザイン: 多施設共同、国際的なレトロスペクティブ試験
- 対象: CAR-T療法を受けた69名のRichter症候群
- CD19-CAR-T療法: 商業的に利用可能なCAR-T製品(axi-cel 64%、tisa-cel 25%、liso-cel 10%、brexu-cel 1%)の投与
有効性:(Median follow up 24ヵ月)
- PFS: Median PFSは4.7ヶ月(95% CI, 2.0-6.9)、2年後のPFSは28.9% (17.8-40.8)。
- OS: Median OSは8.5ヶ月(5.1-25.4)、2年後のOSは38.3% (26.2-50.3)。
- Best response rate: ORR63.8%:CR 46% PR 17% SD 1% PD 30%
- Median duration of response: CR達成で 27.6ヶ月 (14.5-NR) 、PR患者で2.1ヶ月 (1.0- 3.3)
- MRD(カットオフ10-4):測定した81%で陰性
- MRD陰性の予後: Median PFSは20.3ヶ月(6.6-NR)、Median OSは38.4ヶ月(8.6-NR)
- CNSへの進展は病勢進行した患者の8%を占めた
- 非再発死亡は3ヶ月で7.3% (2.7 to 15)、12ヶ月で 13.4% (6.5 to 22.8)。
- ベースラインLDH、CRP高値はPFSの予後悪い
- 前治療数、Ki67index、LDH、CRPはOSの予後と関連
安全性:
- CRS: グレード3以上のCRSは16%の患者に発生。
- ICANS: 37%の患者にグレード3以上のICANSが発生。(43%:axi-cel/brexu-cel、25%:tisa-cel/liso-cel)
- 感染症: 非再発死亡の原因としてCOVID-19関連感染症が4例報告された。
考察・結語:
CD19-CAR-T療法は、前治療の多い治療抵抗性のRichter症候群患者において有望な治療選択肢となる可能性があり、一定の反応と生存期間の延長を示した。一方でICANSやCRSといった副作用はCLLと同様LBCLより多くみられ、また感染症の管理は重要である。
Limitationとしてレトロスペクティブ試験のため、CAR-T準備中の進行や製造失敗などのデータはなく、過大評価している可能性がある。
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