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【ZUMA-5試験】axicabtagene ciloleucel(axi-cel)の5年間の追跡調査:濾胞性リンパ腫は「完治」可能な疾患になるか?

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Neelapu, Sattva S et al. “Five-Year Follow-Up Analysis of ZUMA-5: Axicabtagene Ciloleucel in Relapsed/Refractory Indolent Non-Hodgkin Lymphoma.” Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology vol. 43,33 (2025): 3573-3577. doi:10.1200/JCO-25-00668

濾胞性リンパ腫(FL)に代表される低悪性度非ホジキンリンパ腫(iNHL)の治療において、5年という長期追跡データは、単なる臨床試験の延長ではなく、「完治」という治療目標をさぐることが可能になる非常に重要なデータです。これまで、再発・難治性(R/R)のiNHL患者は、再発を繰り返すたびに奏効期間が短縮し、治癒は困難であると考えられてきました。

本記事では抗CD19 CAR-T細胞療法であるaxicabtagene ciloleucel(axi-cel)のZUMA-5試験の5年解析の結果を紹介します。

キーポイント

  • 持続的で高い奏効率: ORR 90%、CR 75%という高い奏効率に加え、5年(60カ月)時点のPFS率は50.4%、OS率は69.0%を記録。
  • 「治癒」を示唆するプラトーの形成: リンパ腫特異的PFS解析において、投与24〜30カ月以降に曲線が平坦化(プラトー)しており、30カ月以降の増悪イベントはわずか2件に留まっていました。
  • ハイリスク症例における一貫性: POD24やFLIPI高リスクといった、従来の予後不良因子を持つ患者群においても、一貫して良好なPFSが確認されました。
  • バイオマーカーと製品の質: 長期奏効の鍵となる「ナイーブT細胞様表現型(CCR7+ CD45RA+)」の割合は、前治療におけるベンダムスチンの使用状況と相関していることが判明しました。
  • 長期安全性の確立: 5年経過時点でも新たな安全性の懸念は認められず、T細胞由来の二次性悪性腫瘍の報告はゼロでした。

ZUMA-5試験の概要

ZUMA-5試験は、標準的な治療に抵抗性を示すR/R iNHL患者を対象に、axi-celの長期的なベネフィットを検証した第2相ピボタル試験です。本試験の患者背景には、POD24(24カ月以内の再発)や高腫瘍量(GELF基準)など、極めて難治性の高い集団が含まれています。

項目試験仕様の詳細
試験フェーズ第2相、単群、多施設共同試験(ZUMA-5)
試験デザインアフェレーシス後、リンパ球除去化学療法(Flu/Cy)を経てaxi-celを投与
主要評価項目治験責任医師評価による奏効率(ORR/CR)
副次評価項目DOR、PFS、OS、安全性(CRS/ICANS、遅発性毒性)
対象患者層2ライン以上の前治療歴を有するR/RのFL(Grade 1-3a)およびMZL。POD24、高FLIPIスコア、高腫瘍量を含む。

5年長期追跡での有効性

  • 奏効率の維持: ORR 90%(CR 75%)という奏効率が確認されました。データカットオフ時点で、CRを達成した患者の58%がその状態を維持しています。
  • 生存期間の解析: PFS中央値は全患者で62.2カ月、FL患者で57.3カ月に達しました。この数値はPOD24(FL患者の56%)やFLIPI高リスク(44%)といったサブグループ間でも一貫していました。
  • 治療フリー生存(TFS): 生存している患者の55%が、axi-cel投与後にいかなる追加治療も受けていませんでした。

これらの結果は、R/R iNHLにおけるaxi-celの持続的な奏効を示しており、特にFLにおいては根治的治療(Curative therapy)としての可能性を示唆しています。

リンパ腫特異的PFSの分析

FLは高齢者の疾患であり、標準PFSには加齢に伴う心血管疾患や二次発がんなどの「競合リスク」が含まれます。axi-celの真の抗腫瘍効果を評価するには、「リンパ腫特異的PFS」の解析が重要となります。

  • 統計学的乖離の解釈: 60カ月時点の標準PFSは50.4%ですが、リンパ腫関連イベントに限定した累積発現率は35.1%に留まります。この「差」はリンパ腫以外の死因(15.1%)によるものであり、薬剤が疾患そのものを制御し続けていることを示唆します。
  • 疾患治癒の可能性: 投与後30カ月以降の増悪またはリンパ腫死は極めて稀でプラトーとなっており、この時点で生存している患者の多くは、疾患が実質的に「治癒」された状態にあると考えられます。

バイオマーカーと臨床アウトカム

探索的解析により、CAR-T細胞の質と臨床アウトカムの間に明確な相関が認められました。

  • 製品の質: 長期奏効者(Ongoing Responders)の製品内には、ナイーブ様T細胞(CCR7+ CD45RA+)が高頻度に含まれていました(22.3% vs. 非奏効者 9.0%)。
  • ベンダムスチンの影響: 重要な知見として、T細胞の表現型は、前治療におけるベンダムスチンの使用状況と負の相関を示していました。これは、アフェレーシス前の細胞障害性抗がん剤の選択が、最終的なCAR-T製品の質と持続性に直結することを示唆しています。

長期的な安全性とQOL

  • 死亡原因の透明性: 全死亡46例のうち、再発関連死亡(15%)とNRM(15%)は同等でした。CRSによる死亡はわずか1例でした。
  • SPM: SPMは4%(主に急性白血病や骨髄異形成症候群)に認められましたが、これらはリンパ球除去化学療法との関連が示唆されるものであり、T細胞由来の悪性腫瘍は1例も報告されませんでした。
  • 感染症管理: NRMの主な要因は感染症(7%)でした。B細胞の回復は6カ月時点で確認されており、長期的な免疫学的モニタリングの重要性が示されています。

さいごに

ZUMA-5試験の5年長期追跡データは、axi-celがiNHLにおける治療において非常に優れていることを示しました。特にリンパ腫特異的PFSに見られたプラトーは、CAR-T療法がiNHLの治療そして治癒の可能性において重要であることを示唆しています。現在、標準治療との直接比較を行う第3相試験(ZUMA-22)が進行中です。