引用
Crisà, E., Mora, E., Germing, U., et al. Transfusion independence after lenalidomide discontinuation in patients with del(5q) myelodysplastic neoplasm: a HARMONY Alliance study. Leukemia 38, 2259–2265 (2024). https://doi.org/10.1038/s41375-024-02360-1
論文のキーとなるポイント
- MDS del(5q)患者がLenalidomide治療を中止した後でも、56カ月の長期間にわたり輸血依存のない状態(RBC-TI)を維持することが確認された。
- Lenalidomide治療サイクルが12サイクル以上の患者では、輸血依存のない状態の期間がより長い(中央値85.8カ月)。
- 治療再開後も再び輸血依存のない状態を得られる患者が67%と高率であった。
論文の背景と目的
MDS del(5q)は、MDS患者の10–20%で見られる染色体異常です。Lenalidomide(LEN)はこれらの患者において60-70%で輸血依存のない状態(RBC-TI)を、30-40%でcomplete cytogenetic response(CCyR)を達成する一方で、治療の効果がなくなるまでの長期継続が推奨されていました。しかし、LENの長期使用による毒性や費用の問題、そしてTP53変異をもつ12-25%の患者でのクローンの増大が指摘されており、本研究では、LEN治療を中止した患者における輸血依存のない状態の維持期間を評価しました。
試験概要
- 観察研究
- 臨床情報収集期間:2003年12月から2023年1月まで
- 対象患者:MDS del(5q)患者 118名(IPSS-R低-中リスク)
- Lenalidomide(LEN)を使用し、輸血依存のない状態(RBC-TI)を達成した後にLENを中止した患者を追跡
- 同時に他の治療を受けている患者(成長因子使用は除く)は除外
患者背景
- 21/118人の患者はdel(5q)以外の染色体異常を有していた
- LEN中止までの治療サイクルの中央値は12(1–72)
- 85 人 (71%)がLEN治療中になんらかの有害事象を呈していた
- LEN中止時の年齢:77歳 (33–93)
- LEN中止の理由:不耐用 70人 (59%)、反応良好のため医師判断 38人(32%)、患者の意思 9人 (8%) 、不明 1人 (1%)
有効性
- 観察期間の中央値:診断から82か月 (5–302)、LEN中止から49か月
- 50人 (42%)がLEN中止後にRBC-TIを喪失した
- RBC-TI維持期間: LEN治療中止後のRBC-TIの中央値は56.2か月(1-120)
→LEN12サイクル以上の患者でのRBC-TIは85.8か月(vs 31か月; p = 0.001)
→→LEN中止時にCCyRの患者では85.8か月 (vs 50.4か月; p = 0.011) - EFS: EFSは40.8か月(1–130)
→LEN12サイクル以上の患者では58.0か月(vs 18.8か月)
→LEN中止時にCCyRの患者では53.3か月(vs 31.0か月; p = 0.031) - 5y PFS:83%
- LEN中止後のOS中央値:78.4 か月 (2–186)
中止後の反応
- CCyRの喪失:73%
- 高リスクMDS/AMLへの進展:19%、中央値29か月 (1–125)
- LEN中止後の再燃にLENを再開した患者の67%がRBC-TIを再度獲得
TP53遺伝学的検証(82例)
- TP53変異は13/82人で検出された
- TP53変異の推移の1例:変異アリル頻度(VAF)はLEN中止時で7%、RBC-TIの喪失まで中央値4か月
→VAFは26%にまで上昇し、del(20q)などの追加の異常を有していた
考察・結論
Lenalidomide治療を中止しても、MDS del(5q)患者の大多数は長期間にわたり輸血依存のない状態(RBC-TI)を維持でき、再治療でも高い反応率が見られた。この結果は、LENの断続的な使用が一部のMDS del(5q)患者では有効な選択肢であり、患者のQOLの向上や医療資源の削減に寄与する可能性を示している。
トップページへ戻る