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【CARTITUDE-1】5年間の追跡調査結果:進行した多発性骨髄腫におけるCAR-T療法「cilta-cel」の優れた有効性

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Jagannath, Sundar et al. “Long-Term (≥5-Year) Remission and Survival After Treatment With Ciltacabtagene Autoleucel in CARTITUDE-1 Patients With Relapsed/Refractory Multiple Myeloma.” Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology vol. 43,25 (2025): 2766-2771. doi:10.1200/JCO-25-00760

これまで、再発・難治性の多発性骨髄腫(Late line RRMM)患者の予後は極めて厳しく、全生存期間の中央値は約1年とされていました。このような患者群を対象としたCAR-T細胞療法のシルタカブタゲン オートルユーセル(cilta-cel、シルタセル)を評価した「CARTITUDE-1」試験の5年間の追跡調査結果が発表されました。

キーポイント

  • 長期寛解の実現: cilta-celの単回注入を受けた患者の3分の1(33%)が、5年以上にわたり追加治療なしで再発なく生存していました。
  • 生存期間の大幅な延長: 試験に参加した全患者の全生存期間の中央値が60.7ヶ月(約5年)に達しました。
  • 治癒への期待: 一部の患者では、微小残存病変(MRD)陰性の状態が5年以上持続しており、「治癒の可能性」という言葉が現実味を帯びてきました。

1. 3人に1人が5年後も寛解維持

再発を繰り返すことが特徴である多発性骨髄腫において、治療から解放された状態での長期的な寛解は、治療の究極の目標です。特に「5年」という期間は、がん治療における一つの重要なマイルストーンと見なされます。

本試験では、cilta-celの単回注入を受けた97人の患者のうち、実に3分の1にあたる32人(33%)が、5年経過後もがんが進行することなく生存しており、その間、一切の維持療法を受けていませんでした。対象となった患者層は、中央値で6種類もの前治療歴を持ち、その87.6%が主要な3クラスの薬剤(プロテアソーム阻害剤、免疫調整薬、抗CD38抗体)に抵抗性を示す、極めて治療が困難な状態でした。このような難治性の患者集団において、単回の治療でこれほど長期間の寛解が達成されたことは、cilta-celが非常に素晴らしい有効性を有していることを示しています。

2. 全生存期間中央値5年というブレークスルー

臨床試験において、ある治療法が患者の生命にどれだけの真の利益をもたらすかを測るための最も重要な指標が「全生存期間(Overall Survival, OS)」です。CARTITUDE-1試験に参加した97人全体の全生存期間の中央値は60.7ヶ月(約5年)に達しました。この結果は、この患者集団における従来の生存期間予測(約1年)を大幅に延長さており、cilta-celが単に病気の進行を遅らせるだけでなく、患者の生命そのものを救う力を持つことを示しています。

3. 「治癒」の可能性:長期間の微小残存病変(MRD)陰性

がん治療における「完全寛解」は、必ずしも体内からがん細胞が完全に消滅したことを意味しません。標準的な検査では検出できない微量のがん細胞が残り、再発の原因となることがあります。微小残存病変(MRD)が「陰性」となることは、非常に深く、持続的な治療効果が得られたことが示唆されます。

今回の報告では、長期寛解を達成した32人の患者のうち、単一施設で継続的に追跡調査を受けた特定の12人の患者コホートに関する詳細なデータが示されました。その結果、この12人全員(100%)が、5年目以降の時点でMRD検査(感度10⁻⁵)で陰性、かつ画像検査でも病変が認められない状態であることが確認されました。追加治療を一切行わずに、これほど長期間にわたってMRD陰性が持続していることは、cilta-celが一部の患者において「治癒をもたらす可能性がある(potentially curative)」ことを示唆しています。

4. 高リスク患者にも長期寛解の可能性

一般的に、高リスクな遺伝子異常や骨髄外病変を持つ患者は予後が悪いとされています。しかし、CARTITUDE-1において、5年以上の長期寛解を維持した患者群と、5年以内に病気が進行した患者群を比較したところ、高リスクな染色体異常(長期寛解群の23.3%)や髄外形質細胞腫(同12.5%)の有無といったベースラインの特性に、両群間で大きな差は見られませんでした。

つまり、cilta-celによる長期寛解の可能性は、標準リスクの患者に限定されるものではなく、治療が難しいとされる高リスク患者にも当てはまることが示唆されます。一方で、治療開始時の腫瘍量が少ないこと、治療前のヘモグロビン値や血小板数が高いこと、患者自身のT細胞と好中球の比率が高いこと、そしてcilta-cel製剤に含まれるナイーブT細胞の割合が高いことや、より良好なエフェクター対ターゲット比(E:T比)を示すことなどが、長期寛解と関連する可能性として示唆されました。

さいごに

CARTITUDE-1試験の5年追跡データは、再発・難治性多発性骨髄腫の患者に対し、たった一度のcilta-cel注入で、患者の3分の1に5年以上の治療不要な寛解を、そして全体の生存期間の中央値が5年という驚異的な結果をもたらしました。さらに、持続的なMRD陰性のデータは、一部の患者にとって「治癒」の可能性を現実的にしました。

この有効性を受け、cilta-celをより早期の前治療歴が少ない患者に使用することで、さらに良好な結果が得られる可能性があると本論文は推察しています。この仮説は、早期ラインでcilta-celを評価したCARTITUDE-4試験のデータでも評価されており、現在はCARTITUDE-5試験およびCARTITUDE-6試験にて、cilta-celを初回診断時の多発性骨髄腫患者に対して使用する試みがなされています。