MF PR

【MANIFEST-2試験】BET阻害薬ペラブレシブの併用は骨髄線維症治療の標準治療を大幅に上回る有効性を示す

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

Rampal, Raajit K et al. “Pelabresib plus ruxolitinib for JAK inhibitor-naive myelofibrosis: a randomized phase 3 trial.” Nature medicine vol. 31,5 (2025): 1531-1538. doi:10.1038/s41591-025-03572-3

骨髄線維症は、骨髄が線維化し正常な血液細胞を十分に作れなくなる、希少な血液がんの一種です。主な症状として、脾臓の腫れ(脾腫)、倦怠感、貧血などが患者の生活の質を著しく低下させます。現在の標準治療は、ルキソリチニブに代表されるJAK阻害薬ですが、その効果の深さや持続性には限界があり、より優れた治療法が求められる「アンメット・メディカル・ニーズ」が存在します。

このような状況の中、画期的な第III相臨床試験であるMANIFEST-2試験の結果が発表されました。本試験は、BET阻害薬という新しい作用機序を持つペラブレシブ(pelabresib)と、標準治療薬であるルキソリチニブの併用療法が、JAK阻害薬による治療歴のない骨髄線維症患者に対してどのような効果と安全性を示すかを検証したものです。

キーポイント

  • 脾臓縮小効果が約2倍に: 主要な治療目標である脾臓の縮小において、ペラブレシブとルキソリチニブの併用療法は、ルキソリチニブ単独(プラセボ併用)と比較して、35%以上の体積縮小を達成した患者の割合をほぼ2倍(65.9% vs 35.2%)に高め、統計的に有意な改善を示しました。
  • 疾患の根本に作用する可能性: 併用療法は、症状の緩和だけでなく、疾患の生物学的な特徴にも好影響を与えました。骨髄の線維化の改善や、疾患の進行に関与する炎症性サイトカインのより顕著な減少が確認され、疾患修飾効果の可能性が示唆されています。
  • 貧血の改善と管理可能な安全性: 併用療法群では、重篤な副作用(グレード3以上)の全体的な発生率が標準治療群よりも低く、忍容性は良好でした。特に、貧血の発生が少なく、輸血を必要とする患者の割合も低いという臨床的ベネフィットが示されました。

MANIFEST-2 試験の概要

治験フェーズ: 第III相、ランダム化、二重盲検、実薬対照国際共同試験

対象患者: JAK阻害薬による治療歴のない骨髄線維症患者 (原発性、真性多血症後、本態性血小板血症後)

主要評価項目 (Primary Endpoint): 24週時点でのベースラインからの脾臓体積35%以上の縮小(SVR35)を達成した患者の割合

主な副次評価項目 (Key Secondary Endpoints): 24週時点での総症状スコア(TSS)のベースラインからの絶対変化量、およびTSSが50%以上改善(TSS50)した患者の割合

治験デザイン (Trial Design):(患者は1:1の割合でランダムに割り付け)

  • 併用療法群: ペラブレシブ + ルキソリチニブ
  • 対照群: プラセボ+ ルキソリチニブ

1. 主要目標を達成:脾臓の大幅な縮小に成功

骨髄線維症において、脾臓の腫れ(脾腫)は最も特徴的で、患者に腹部の圧迫感や早期満腹感などの苦痛を与える身体的症状です。そのため、脾臓のサイズを縮小させることは、治療における最も重要な目標の一つとされています。

MANIFEST-2試験は、この主要な目標を達成しました。24週時点で、ペラブレシブとルキソリチニブの併用療法を受けた患者の65.9%が、脾臓体積の35%以上の縮小を達成しました。これに対し、プラセボとルキソリチニブの標準治療群では35.2%に留まりました。この差は統計的に有意であり(P < 0.001)、併用療法が標準治療の約2倍の効果を発揮したことを示しています。

2. 患者の自覚症状について

脾臓の大きさのような指標だけでなく、患者が日々どのように感じているか、つまり自覚症状の改善も治療効果を測る上では重要です。MANIFEST-2試験では、総症状スコア(TSS)を用いてこの点が評価されました。

結果として、両方の治療群で患者の症状は大幅に改善されました。しかし、併用療法群と標準治療群の間で、症状改善の度合いに統計的に有意な差は見られませんでした(P値は0.0545)。また、症状が50%以上改善した患者の割合(TSS50)は、併用療法群で52.3%、標準治療群で46.3%でしたが、この差も統計的に有意ではありませんでした。これは、ペラブレシブの追加が、ルキソリチニブがもたらす強力な症状改善効果を統計的に上回るまでには至らなかったことを意味します。しかしながら、併用療法が標準治療と同等の優れた症状緩和効果を提供したことも事実であり、治療全体の有効性を損なうものではありません。

3. 疾患の病態の根本にアプローチ

新しいがん治療の究極的な目標は、単に症状を抑えるだけでなく、病態の根本的な原因に働きかけ、その進行を食い止めることです。MANIFEST-2試験の探索的解析では、ペラブレシブとルキソリチニブの併用療法がこの点で有望な兆候を示しました。

併用療法群では標準治療群と比較して、骨髄の線維化の改善度合いが大きく、またTNF、IL-6、IL-8といった疾患の悪化に関与する炎症性サイトカインの減少幅も大きいことが明らかになりました。特にIL-8は、標準治療群では増加したのに対し、併用療法群では減少していました。これらのデータは、この併用療法が単なる対症療法ではなく、骨髄線維症の病態そのものを良い方向に変化させる「疾患修飾効果」を持つ可能性を示唆しています。

4. 貧血の改善

貧血は、骨髄線維症患者が直面する最も一般的で衰弱性の高い合併症の一つです。頻繁な輸血が必要になることもあり、患者の生活の質や治療の負担に大きく影響します。

本試験において、ペラブレシブ併用療法は貧血に対して好ましい影響をもたらしました。併用療法群では、標準治療群に比べてヘモグロビン値の改善を示した患者の割合が数値的に高く、治療開始後24週間に輸血を必要とした患者の割合も低い結果となりました(併用療法群 27.6% vs 標準治療群 37.5%)。これは、治療によって引き起こされる貧血が少ないだけでなく、疾患由来の貧血自体を改善する可能性を示しており、患者にとって大きな臨床的ベネフィットとなり得ます。

5. 管理可能な安全性プロファイル

安全性プロファイルは、全体的な重篤な(グレード3以上)有害事象の発生率が、併用療法群(49.1%)の方が標準治療群(57.0%)よりも低い傾向にありました。血小板減少症は併用療法群でより多く見られましたが(52.8% vs 37.4%)、そのほとんどは用量調節によって管理可能であり、治療中止に至るケースは稀でした。対照的に、貧血の発生率は併用療法群で低く(44.8% vs 55.1%)、これは前述の臨床的ベネフィットを裏付けるものです。全体として、ペラブレシブとルキソリチニブの併用療法は忍容性が高く、その有効性を支える安全な治療選択肢であることが示されました。

まとめ

MANIFEST-2試験は、ペラブレシブとルキソリチニブの併用療法が、JAK阻害薬未治療の骨髄線維症患者に対し、標準治療を大幅に上回る脾臓縮小効果をもたらすことを証明しました。さらに、疾患の生物学的側面の改善や貧血の軽減といった有望な効果も示され、その安全性プロファイルは十分に管理可能でした。